住宅ローン実質マイナス金利ってなに?マイナス金利との違いは

住宅ローンの「実質マイナス金利」という言葉を聞くことがあります。「マイナス金利」という言葉との違いはどこにあるのでしょうか?「実質マイナス金利」を理解するには「住宅ローン減税」について理解しておく必要があります。住宅ローンを組んで住宅を購入すると「住宅ローン減税」を受けることができるのですが、今回はこの「住宅ローン減税」の仕組みから解説します。

住宅ローン減税の仕組み

現在の「住宅ローン減税」制度は、住宅ローンを組んだ最初の10年間「毎年末のローン残高の1%分」を所得税から減税できるというものです。減税できる金額は1年で最大50万円(長期優良住宅等の場合、一般の住宅の場合は40万円)までという上限があります。また所得税から引ききれない分は一部住民税からも減税できます(住民税からの減税は最大136,500円)。住宅ローン残高の1%分の減税が受けられる、というのがポイントです。

住宅ローンの実質マイナス金利とは

マイナス金利導入で住宅ローンの金利はかなり下がりました。変動金利タイプでは大手都市銀行の最優遇金利で0.625%、ソニー銀行の変動金利は2016年4月から0.499%になる予定です。5年固定タイプや10年固定タイプの金利でも1%を下回る金融機関も出てきています。

このように住宅ローン金利が1%を下回っている今、住宅ローン減税でローン残高の1%分の減税が受けられる最初の10年は、「1年間に払う利息」より「その年に受けられる住宅ローン減税額」の方が大きくなるということが起こりえます。住宅ローンの金利低下で「払う利息」より「受けられる減税額」の方が大きくなることを、「住宅ローンが実質マイナス金利になっている」と言うことがあります

Aさんの事例

ここからは具体的な事例を見ていきます。年収600万円のAさんが金利0.625%、35年返済で、4,500万円の住宅ローンを組み、認定長期優良住宅を購入、2016年5月から返済を開始したとします(元利均等返済という一般的な返済形式とします)。Aさんの所得税は15万円、住民税は26万円と仮定します。住宅ローン減税とその年に払った利息の比較をしたのが次のグラフです。
図1
グラフを見ていただくとわかる通り、Aさんの場合は住宅ローン減税が使える当初10年間はずっと「払う利息」(赤)より「住宅ローン減税」(青)の額の方が大きくなっており、「実質マイナス金利」になっていると言えそうです。なお金利は0.625%で10年間変わらず、所得税・住民税の額も10年間変わらず、繰上返済は行わないという前提です。

同じAさんでも金利が0.775%(2015年12月時点での大手都市銀行の変動金利の最優遇金利)だったとして計算すると住宅ローン減税と利息の関係は以下のようになります。
図2
0.625%の時と比較すると、2年目から6年目までは今度は「その年に払う利息」(オレンジ)の方が、ローン減税の額(青緑)よりも大きくなってしまいます。これだと「実質マイナス金利」になっているとは言えません。

このように金利が1%以下であっても必ずしも「実質マイナス金利」状態にはならないこともありえます。Aさんの0.625%と0.775%という比較から、マイナス金利で以前より金利が低くなった今、ローン減税額が払う利息を上回る「実質マイナス金利」になる可能性が以前よりも高くなっているということは言えるでしょう。

Bさんの事例

今度はBさんの事例です。年収400万円のBさんが、金利0.625%、35年返済で、3,000万円の住宅ローンを組み、2016年5月から返済を開始したとします(元利均等返済)。

Bさんの所得税は6万円、住民税は14万円と仮定し、10年間の住宅ローン減税額とその年に支払った住宅ローンの利息の合計をまとめると以下のようになります。なおBさんの場合も金利は0.625%で10年間変わらず、所得税・住民税の額も10年間変わらず、繰上返済は行わないという前提です。

Bさんの場合は金利が0.625%であっても2年目から6年目にかけてローン減税の額よりも払う利息の方が大きくなっていることがわかります。それはBさんの払っている税額が小さいからです。住宅ローン減税は住宅ローンの年末残高の1%分の減税を受けられますが、払った税額以上の減税は受けられません。そのためたとえ金利が低くても、Bさんのように年収がさほど高くなく、住宅ローン金額も小さくなる場合には、必ずしも「払う利息」より「受けられる減税額」が大きくなるとは限らない、という点は注意しておきましょう。
図3

まとめ

マイナス金利が導入され、住宅ローンの金利も大きくさがりました。マイナス金利が導入された国の中では、デンマークのように住宅ローンの金利もマイナスになる例もあるようですが、日本では今のところ「住宅ローン金利がマイナス金利になる」ところまでは行っていません。

しかし日本には住宅ローン減税という仕組みがあります。「年末残高の1%分を減税できる」という住宅ローン減税まで考えると、住宅ローン減税が使える最初の10年だけですが、「実質的に住宅ローンもマイナス金利になっている」(住宅ローン実質マイナス金利)と言うことはできるでしょう。

著者
inoue
井上 光章

井上光章株式会社FPアルトゥル代表取締役
日本住宅保証株式会社取締役
一般社団法人日本モーゲージコンサルタント協会 監事
CFP 1級FP技能士

2007年より独立系ファイナンシャルプランナーとして住宅ローンのコンサルティングを行う。住宅購入者の住宅ローン相談、住宅ローンの借り換え相談の件数は9年で500組以上。保険の販売等は行わずコンサルティングフィーのみを収益とすることで中立的立場から住宅ローンのコンサルティングを行っている。住宅ローン借り換えコンサルティングでは、ただ毎月返済額を下げればいいのではなく、その家計のリスクを分析してローン選択に活かすことを提唱、オリジナルなコンサルティング手法でアドバイスを行っている。著書に『マイホームで年金をつくる』(共著)。住宅関連雑誌や住宅展示場等のWEBサイトへのコラム執筆も多く行う。ハウスメーカー等での講演も多数。

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