- 2016-5-23
- マイナス金利と住宅ローン, 井上光章
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マイナス金利で金利も低下し、住宅ローンの借り換えをしたいという人も増えています。
どの金融機関で借り換えをすればいいのか、悩む人も多いです。今回は、マイナス金利で住宅ローンを借り換えるならどこがおすすめか、について考えていきます。
できるだけ金利の低いところを
住宅ローンの借り換えをする際にはまず、金利ができるだけ低くなるところを選ぶべきです。
例えば変動金利タイプで比較するとauじぶん銀行や住信SBIネット銀行の金利が低くなります。
<変動金利タイプの金利が低い金融機関の例>
ソニー銀行 | 0.549% |
住信SBIネット銀行 | 0.497% |
りそな銀行 | 0.569% |
auじぶん銀行 | 0.497% |
イオン銀行 | 0.570% |
固定金利で選ぶならフラット35を扱っているARUHIや楽天銀行、優良住宅ローンなどが候補に挙がる他、三菱東京UFJ銀行や三井住友信託銀行なども金利は低いです(なお、フラット35以外は金利に団信保険料が含まれており、フラット35の金利には団信保険料は含まれていません)。
<固定金利タイプの金利が低い金融機関の例>
ARUHI(フラット35) | 1.08% |
楽天銀行(フラット35) | 1.08% |
優良住宅ローン (フラット35) |
1.08% |
三菱東京UFJ銀行 31年~35年固定 |
1.11% |
三井住友信託銀行 30年固定 |
1.05% |
※フラット35は融資率9割以下、返済年数21年以上の場合の金利
住宅ローンの借り換えを検討する際は、まず金利の低い金融機関を探すことから始めるとよいでしょう。
トータルの支払額で有利なところも
借り換えでは金利が低い金融機関を選ぶべき、なのですが、厳密には関係する諸費用を合わせたトータルの支払額でどこが有利になるかを考える必要があります。例えば固定金利タイプでの借り換えを行うとして、ARUHIと三菱東京UFJ銀行とを候補にしたとします。金利だけ比較すると上で見たように、ARUHIのフラット35を使った方が低くなります。しかし団信保険料や融資手数料、保証料等を合わせて考えると、金利は多少高くても三菱東京UFJ銀行を使った方がトータルの支払額では有利になるのです。
<借り換え後のローン金額3,000万円、返済期間32年とした場合の比較>
三菱東京UFJ銀行 | ARUHI | |
---|---|---|
金利 | 1.11% | 1.08% |
毎月返済額 | 92,855円 | 92,435円 |
総返済額 A | 35,656,290円 | 35,495,205円 |
団信保険料 B | 0円 | 1,856,000円(※) |
融資手数料 C | 32,400円 | 648,000円 |
保証料 D | 591,900円(※) | 0円 |
トータルの支払額 (A+B+C+D) |
36,280,590円 | 37,999,205円 |
※ARUHIの団信保険料や三菱東京UFJ銀行の保証料は概算。
そもそも変動金利か固定金利かをきちんと考える
金融機関を選ぶ際には金利やトータルの支払で比較することが大切ですが、そもそもその前に変動金利、5年固定、10年固定、20年固定、固定金利といった様々な金利タイプの中から自分に合った金利タイプを選ぶ必要があります。
金利の種類を選択する際には「世の中の金利はしばらく上がりそうにないから変動金利でいいですよね」と安易に変動金利にする人も多いですが、金利の見通しに基づいて、金利種類を決めるのは危険な考え方です。
金利の種類の基本は固定金利と考え、金利上昇リスクを取っても大丈夫な家計の場合にはじめて変動金利や5年固定等を検討するとよいでしょう。
金利上昇リスクを取ってもよいというのは例えば当初住宅ローンを借りた時、妻は専業主婦だったが子育てがひと段落して共働きになって家計に余裕が出たというようなケースや、子どもがいないケース、子どもが独立して家計が楽になったというようなケース、相続が発生して貯蓄が増えたようなケース等が考えられます。こういった場合、金利が上がって毎月返済額が増えたとしても、返済に困ることはないはず。
それならば、金利上昇リスクを取って、金利の低い変動金利や5年固定を選んでも問題ないと判断できます(2年固定や3年固定でも10年固定等でもよいかもしれません)。
なお、マイナス金利導入後、以前と比べて変動金利と固定金利との金利差は縮まっています。変動金利を固定金利と比べた場合のメリットは「金利が低い」ということですが、金利差が縮まってしまった今、以前ほど変動金利の優位性は大きくありません。
その意味でも金利の低い今のうちに固定金利に借り換えておくのが正しい方法と言えるかもしれません。借り換えを機に自分に合った金利種類をもう一度考えてみることをお勧めします。
まとめ
住宅ローンの借り換えを行う際は、金利ができるだけ低いところを選ぶことが大切。さらには金利以外の様々な費用も含めたトータルの支払でどこが有利かを検討する必要もあります。変動金利なら住信SBIネット銀行やauじぶん銀行等は金利が低くておすすめですが、金利が低いところは審査が厳しい傾向もあります(ソニー銀行や住信SBIネット銀行等は審査が厳しい印象があります)。
固定金利を選ぶなら、フラット35を中心に、三菱東京UFJ銀行等を比較して決めるとよいでしょう。比較の際は金利だけでなくトータルの支払額を確認することが大切です。
どの金融機関がいいかを決める際には、そもそも変動金利、5年固定、10年固定、固定金利といった様々な金利タイプがある中でどのタイプがいいのかを決める必要があります。住宅ローンの基本は固定金利と考えるのが無難です。マイナス金利導入で、特に固定金利型の金利は大きく下がり、固定金利と変動金利の金利差が以前より小さくなった今、固定金利を選ぶのが合理的だとも言えます。
なお、今回取り上げた金融機関の金利は2016年5月時点の金利です。毎月のように金利は変化していきますので、その時々によって有利な金融機関も異なります。最新の金利は常にチェックしたいですね。
著者

井上光章株式会社FPアルトゥル代表取締役
日本住宅保証株式会社取締役
一般社団法人日本モーゲージコンサルタント協会 監事
CFP 1級FP技能士
2007年より独立系ファイナンシャルプランナーとして住宅ローンのコンサルティングを行う。住宅購入者の住宅ローン相談、住宅ローンの借り換え相談の件数は9年で500組以上。保険の販売等は行わずコンサルティングフィーのみを収益とすることで中立的立場から住宅ローンのコンサルティングを行っている。住宅ローン借り換えコンサルティングでは、ただ毎月返済額を下げればいいのではなく、その家計のリスクを分析してローン選択に活かすことを提唱、オリジナルなコンサルティング手法でアドバイスを行っている。著書に『マイホームで年金をつくる』(共著)。住宅関連雑誌や住宅展示場等のWEBサイトへのコラム執筆も多く行う。ハウスメーカー等での講演も多数。
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