住宅購入と賃貸、どちらが得?メリットとデメリットを比較

購入と賃貸をどう考えたら良いのでしょう?

結婚したての慌ただしい時期が過ぎて将来の夢を語り合うような時や、二世が誕生して大きくなる姿を眺めている時に、のびのびと暮らせる自分の家を持ちたいと誰もが思うのではないでしょうか?

そんな時、昔から話題になっていたのが「家を持つのと借りるのとどっちが得なの?」という疑問です。

もちろんそこには個々人の人生観が影響を与えますので、一概にこっちがいいと断言することは適当ではありませんが、人生の大きな決断をする際に一度しっかり考えた方がいいテーマだと思います。

自分の物にする(住宅を購入する)という決断に大きな前提なるのが「将来手放す時期が来た時には(今まで払ってきた購入費用以上で処分できる)それなりの価格で売れる」という期待ですが、この前提は人口が増加し土地の価格が下がらなかった時代だから通用した”神話”のようなものだと考えなければなりません。

これから購入する場合には、「場所によっては価格が上がる場合も、下がる場合もあり得る」ことだと十分腹を括っておかなければなりません。考えておかなければならない予想されるデメリットと言えます。

今後の土地の価格はどうなる(購入の場合1)

確かに昭和40年代から50年代にかけての高度成長期には早い者勝ちのようなペースで不動産が売れていきましたし、実際土地の価格が下がる心配をする人は少なかったでしょう。

その後、バブル崩壊を経験した日本人は今までの常識が通じにくくなった経済環境に戸惑ってきましたが、根本にあるのは”じきに土地の値段は上がる筈だ”という思いと、”なかなかデフレから脱却できないものだな”という思いであって、土地の価格は上がるという期待が根っこにあります。公示価格が公表される際の新聞のコメントは土地の価格が上昇すると景気回復が本物だという認識を滲ませたものだと言えます。

土地の価格が景気のバロメーターだとするといつになっても景気回復が進まないと言われそうですが果たしてそういう認識は正しいのでしょうか?

最近になって利便性の優れた地域の土地に上昇する傾向が見られますが、バブルの時期のように地価がほとんどの地域で上昇するような動きは見られませんし、今後もそうしたことは再現しないでしょう。

資本主義経済は需要と供給で成り立っています。供給よりも需要が多ければ価格は上がり、需要よりも供給が多ければ価格は下がるという大原則です。

どんなに優秀な経済人であっても、どんなに立派な学者であってもこの大原則から自由になることができません。相続等により資産を引き継いだ人々を除くと、資産家の多くはこの大原則を基盤として現在の富を築いたと言えますし、我々にも等しく適用されるルールと言っていいでしょう。

土地の供給が需要を上回る時代が訪れます(購入の場合2)

この前提の下で今後の需要の動向を考えてみます。総務省統計局の調査によると127百万人(平成27年度)である日本の人口が30年後の平成57年には102百万人になると予想されています。今住宅ローンを借りて30年間支払い続けた頃には日本の人口が25百万人(約20%)減少しているのです。

ちなみに同じ調査で都道府県別の人口推移を見てみると平成22年から平成27年までの実績で人口が増加しているのは47都道府県のうち8都県しかありません。こうした趨勢を考えると30年後にはもっと明確な形で都市部への人の移動が進んでいるでしょうから、ごく一部を除く地方都市では惨憺たる状況が想像されます。(この調査が示しているのは都道府県という大きなくくりの増減です。実際には一つの都道府県の中でも増加する地域と減少する地域の格差が明確になると思われます)。

つまり今後は利便性の高い首都圏や地方の中核都市のようなところ以外の不動産の需要は減少を続け、経済の大原則に従って不動産価格は軒並み下落していくことになります。果てには買い手のつかない地域が広がっていくでしょう。

住宅ローンを必死に支払い精一杯の辛抱をして、30年後にやっと自分のものになった不動産の価値が目減りして、支払った対価に相応しくないような価格になってしまったり、売却することが不可能な状況になったとしたら悪夢のようなものですよね。

空き住宅が増加します(購入の場合3)

今でも老朽化した空き住宅が問題になっていますが、今後は建築年数の若い物件でも買い手が付かないで放置される事態が考えられます。人口が減少して、需要が減退するマイナスのスパイラルを逃れることができないとすれば、購入する場合には今まで以上の慎重さが求められることは言うまでもありません。

また、3月26日付の日本経済新聞には金融機関の不動産向け融資額が2016年に過去最高を記録したことが報道されています。この融資額増加の大きな要因となったのは相続税対策を謳い文句にするアパート建築の増加です。借り手のつかないような徒歩圏外の不便な土地に何戸ものアパートが建設され、いつまでも入居者を募集しているという様は異様な光景でしょう。

こうした事例が増加する要因には建築工事を受注したい建設業者の思惑と、相続税を軽減したい資産家の欲求と、融資額を増加させたい金融機関の方針が絡み合っています。

今後懸念されるのは不良債権の増加と空き住宅の増加です。人口減少の時代に需給関係を度外視した住宅の供給が行われています。

住宅を購入する場合はコンパクトに(やっぱり欲しい!)

今まで記述してきた事例を読んでも住宅を購入したいと考えている方には、アクセスに恵まれた地域にコンパクトな住宅を勧めたいと思います。住宅を購入するとなると、あれも欲しいこれも欲しいとなって、ついつい分不相応な買い物になってしまいがちですから、コンパクトにするという心のブレーキを忘れないで下さい。

建設業者さんはお客さんの希望にダメ出しはしません。販売業者も「ずいぶん無理な買い物ですね」とは決して言いません。金融機関も激しい貸出競争を繰り広げているので「ずいぶん渋い銀行だな。他に貸してくれるところはいくらでもあるんだぞ」と言われてお客さんを逃そうとは思っていません。つまり大きくなる一方のローンの雪だるまを適正なサイズで完成させられるのはあなたしかいないのです。

アクセスに恵まれた地域を勧めるのは、日々の利便性を確保することはもちろんですが、最終的な売却処分の時期に買い手にせめて検討のテーブルに乗せてもらうための最低限の条件だと考えるからです。アクセスに関しては地域格差が非常に大きいと思いますが、乗車時間は弾力的に考えても最寄りの地下鉄やJR(私鉄も)の駅から徒歩圏内であることは必須です。

中古マンションを購入する場合には、上記に加えて耐震補強工事が行われていることと修繕積立金が積み立てられていることを確認したうえで、建築経過年数を十分検討しましょう。マンションは今や一般的な住宅として十分認知されていますが、大規模修繕や建て替えとなると非常に困難な問題が多くあり、簡単には行きません。

ご自分の年齢とマンションの建築経過年数を合計して40年から50年程度を目途にすべきです(例えば30歳で購入する場合には建築後10年から20年程度の良質な物件であること)。

賃借の場合は(想定されるメリットとデメリット)

賃借の場合は時代の趨勢に合わせて条件を見比べて転居できますし、家族構成の変化につれてサイズアップ、ダウンサイジングのいずれも可能です。

今までは高齢者への賃貸を敬遠するオーナーの存在がネック(高齢者は火災等の事故や不慮の事故の心配がある)でしたが、今後は入居希望者の年齢の高齢化が進行し、入居希望者の絶対数も減少するためオーナーも意識変更を迫られる時代になります。

多くの高齢者が賃貸住宅を確保しにくい状況は社会のミスマッチとしてシステムの変更が進むものと思われます。もちろん、介護が必要な状態になれば購入派であっても賃貸派であっても、介護施設の利用を検討しなければなりませんので条件は同じです。

気が変われば(ローンを組めるとか、潤沢な自己資金があるということは当然ですが)購入派に転向することも可能ですので、賃貸派でいる間は検討の幅は広いと言えます。

最後に

賃借と購入した場合の経済的な損得についてはあえて触れませんでした。何故かといえば変動要因が非常に多く条件を設定することが困難であることもありますが、大雑把に言うと同等の条件の住宅である場合、所有することに係る生涯の一切の費用(ローンの返済を含みます)と賃借することに係るそれに大きな違いはないと考えられるからです。

今までは土地と言う資産が残ったので購入派に分があったと思いますが、今後は残った土地やマンションが資産になるとは限らない(負債になるかどうかは微妙ですが処分に困る”負担”になることは想像できます)という非常に難しい時代になりつつあるということです。

不動産は同じ条件のものが二つと存在しない非常に個別性の高い資産です。そのため、どのような評価方法で価値を算出しても、”欲しい・買いたい”と言う人が現れない限り固定資産税を払い続けなければならないのです。

購入する場合も賃借する場合も、メリットとデメリットを十分理解して、後悔することのないようにしたいものです。

著者
yamamoto
山木 繁男

1級FP技能士
宅地建物取引士

地方銀行に40年余り勤続し営業店業務全般を経験、後半期には住宅ローン営業拠点の責任者として最前線を経験、関連会社である個人ローン保証会社で審査部門責任者さらには管理部門(回収部門)の責任者として住宅ローンに係る「陰と陽」を目の当たりにする。さらに、関連の不動産会社で常務執行役員としてオフィスのリーシング業務を推進した。現在は父親の介護の傍ら、キャリアを生かして住宅関連情報の執筆活動を続けている。

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