悩ましい!?マイナス金利で繰り上げ返済のタイミングは?賢い住宅ローン返済方法

住宅ローンを組む人は35年といった長い期間、借金の返済をしていかなくてはなりません。35年も返済し続けるのは嫌だという場合、「繰り上げ返済」を行い、もっと短い期間でローンを返し終えたいという人は多いです。今回はマイナス金利時代の今、繰り上げ返済のタイミングはいつがよいのか、賢い住宅ローンの返済方法について考えます。

繰り上げ返済の効果

繰り上げ返済とは、毎月の決められた返済とは別の返済を行い、住宅ローンの残高を早く減らしていくことです。繰り上げ返済により返済期間を短くできます。期間を短くすると、その分余計な利息を払わずに済むので「利息削減効果」もあります。

例えば3,000万円、金利1.5%、35年返済(元利均等返済)で住宅ローンを組んでいる場合、10年後に300万円の繰り上げ返済(期間短縮型※)を行うと、返済期間は3年10ヶ月短縮されて、31年2ヶ月となります。またこの繰り上げ返済による利息削減効果は約124万円となります。

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※繰り上げ返済には「返済期間を短くする方法(期間短縮型)」の他に「毎月の支払を少なくする方法(返済額軽減型)」もあります。この2つの方法については後半に説明しています。

繰り上げ返済はいつ行うべきか?

繰り上げ返済を行うことで利息削減効果があるわけですが、この繰り上げ返済をいつ行うかで効果にも差が出てきます。効果が大きくなるのは返済開始後早めの時期なのです。例えば同じ300万円の繰り上げ返済を5年後に行う場合、10年後に行う場合、20年後に行う場合で比較してみると以下のようになります。

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住宅ローンの毎月の返済額の内訳を見ると元金の返済と利息の支払いとに分けられます。返済当初は利息の支払いの方が多いので、繰り上げ返済による効果も大きくなるのです。

住宅ローン減税と繰り上げ返済

住宅ローンの繰り上げ返済は、返済期間のできるだけ初期のうちに行うと効果が高いということがわかりました。しかし、もう1つ考えなければならないのが「住宅ローン減税」との兼ね合いです。住宅ローン減税を受けられる期間に繰り上げ返済をすると、その分住宅ローンの残高が減ってしまい、受けられる減税額が小さくなる可能性もあります。

年収600万円のAさんが、3,000万円、35年、金利1.5%で住宅ローンを組む場合、10年間の住宅ローン減税の合計は263万円ほどになります(色々な仮定を置いて試算した数値のため、年収600万円の人の住宅ローン減税が必ず263万円になるわけではありません)。

5年後に300万円の繰り上げ返済を行うと、その分ローンの残高が減り受けられる住宅ローン減税の金額も小さくなってしまいます(下記の右のグラフ)。10年間の住宅ローン減税は248万円まで減ります。受けられる減税額は15万円少なくなるということです。今回の繰り上げ返済による利息削減効果は157万円あるので、この例の場合は繰り上げ返済をした方が得、ということになります。年収やローンの金額、金利等、条件が変わると結果も変わりますので、住宅ローン減税を受けている間に繰り上げ返済を行う場合にはローン減税を加味してどれくらいメリットがあるのかを計算する必要があります。

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もし、繰り上げ返済による利息削減効果より、繰り上げ返済で減ってしまう住宅ローン減税の金額の方が大きければ、住宅ローン減税の期間が終わってから繰り上げ返済を行う方が合理的だと言えます。

期間短縮型と返済額軽減型

住宅ローンの繰り上げ返済には2つの種類があります。今まで説明してきたのは「期間短縮型」の繰り上げ返済です。もう1つ「返済額軽減型」という繰り上げ返済もあります。「期間短縮型」は返済期間を短くする繰り上げ返済方法で「返済額軽減型」は毎月の返済額を減らす方法です。

例えば3,000万円、金利1.5%、35年元利均等返済という条件で住宅ローンを借りていて10年後に繰り上げ返済を行う場合を考えます。期間短縮型では、返済期間は3年10ヶ月短縮されて、31年2ヶ月となり、利息削減効果は約124万円となります。返済額軽減型では、毎月返済額が79,857円まで減りますが、利息削減効果は60万円と期間短縮型に比べると小さくなります。

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ただし、返済額軽減型の方は、毎月返済額を減らした分、貯蓄に回せる金額が増えるのでそれを貯めて行き、ある程度貯まったところで繰り上げ返済を行えば利息削減効果の差はもっと小さくなります。従って、どちらの繰り上げ返済タイプを選ぶかは、繰り上げ返済を行ってどうしたいのか、という目的次第になる、と言えます。今後、急な出費が発生したり、収入が不本意に減らされてしまったりという不測の事態に備えるためには、返済額軽減型で毎月の返済額を少なくして貯蓄を増やしていく方が柔軟に対応できるはずです。

マイナス金利時代の繰り上げ返済

最後に繰り上げ返済の効果は、金利が高い時の方が利息削減効果は大きい、ということに触れておきます。3,000万円、35年元利均等返済という条件で住宅ローンを借りていて10年後に300万円の繰り上げ返済を行う場合を考えます。金利が1.5%だと利息削減効果は124万円ですが、もし当初の金利が3%の場合には、利息削減効果は298万円となります。

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金利が高いほど繰り上げ返済は効果があるわけです。マイナス金利時代の今、かつてより金利が低くなっている分繰り上げ返済の利息削減効果は小さくなっているということも言えます。

まとめ

住宅ローンの繰り上げ返済には利息削減効果があります。しかし繰り上げ返済をすると、その分の貯蓄を減らすことになります。貯蓄が少なくなると、何か急な出費が必要になる時や思わぬ収入減少等が起きた時に家計のやりくりが大変になります。「住宅ローンという借金は少ないが貯蓄も少ない」状態と、「住宅ローンという借金は多いが貯蓄も多い」という状態とを比較すると、収入減少や出費増大といったリスクに備えやすいのは「住宅ローンという借金は多いが貯蓄も多い」という状態です。

したがって、住宅ローンの繰り上げ返済が得になるからといって、むやみやたらに繰り上げ返済を行うことは避けた方が賢明です。マイナス金利時代、住宅ローンの金利も低く、同じ金額の繰り上げ返済で得られる利息削減効果は以前よりも小さくなってもいます。繰り上げ返済はある程度の貯蓄を作った後の余裕資金で行うべきものと言えるでしょう。

著者
inoue
井上 光章

井上光章株式会社FPアルトゥル代表取締役
日本住宅保証株式会社取締役
一般社団法人日本モーゲージコンサルタント協会 監事
CFP 1級FP技能士

2007年より独立系ファイナンシャルプランナーとして住宅ローンのコンサルティングを行う。住宅購入者の住宅ローン相談、住宅ローンの借り換え相談の件数は9年で500組以上。保険の販売等は行わずコンサルティングフィーのみを収益とすることで中立的立場から住宅ローンのコンサルティングを行っている。住宅ローン借り換えコンサルティングでは、ただ毎月返済額を下げればいいのではなく、その家計のリスクを分析してローン選択に活かすことを提唱、オリジナルなコンサルティング手法でアドバイスを行っている。著書に『マイホームで年金をつくる』(共著)。住宅関連雑誌や住宅展示場等のWEBサイトへのコラム執筆も多く行う。ハウスメーカー等での講演も多数。

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